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はじめに/発刊に当たって

 札幌は地理的に温帯と亜寒帯の境界に位置し、南方系の生物と北方系の生物が混在して生息・生育しており、全国5番目の大都市にも関わらず動物種や植物種が豊富です。
 札幌とその周辺地域には大面積の森林があり、札幌の市域面積のうち森林面積が約60%を占めています。札幌の南西部の森林は、その多くが雨水を吸収して水源を保ち、あわせて河川の流量を調節するための森林としての水源かん養林、風致保安林などに指定されており、天然記念物、風致地区、自然公園、環境緑地保護地区などが含まれています。
 これらの森林は、自然の状態のままで、人手の加えられていない天然林の比率が高く、植生、鳥獣、昆虫、地質、地形などの点で自然性が良好に保たれ、多様な生物の生息・生育環境となっています。
 しかし、札幌は明治維新後の開拓計画から140年のほぼ1世紀半において、190万人の人口を有し、その間、市域拡大のため森を切り開き今日の街の姿になりました。街の拡大とともに森林が減少し、中でも市街地に接する山麓、台地、丘陵地の森林は減少の一途といえます。
 本書では、このように市域拡大が進む中でもいまだ自然が豊富な現状をとらえ、また身近な動植物を再認識する中からあらためて自然環境を考えてみました。
 特に市内および周辺地域における野鳥や昆虫を直接観察することによって札幌の自然の実態をあらためて知りました。都市を包み込んだ自然環境を積極的に保全することによって、自然環境を豊富に蓄えた札幌市を市民の貴重な財産として後世に継承されることを期待します。

 
  2012年夏    
札幌市政研究所