11.コマドリ、イスカ…珍鳥も訪れる豊平公園
札幌市内の野鳥の集まるフィールドの中で、近ごろバードウォッチャーや野鳥写真愛好家が注目するスポットがいくつかあります。以下はその一部です。
豊平公園(豊平区/写真)は公園の緑地部分が200m四方ほどしかなく、しかも周囲は住宅などの密集地。花壇などが多く、いわば人工的空間が目につく公園ですが、意外や意外、札幌ではそうそう見かけない鳥が来る所として有名です。
コマドリもその一つ。頭や胸が濃いオレンジ色をしたツグミ科の鳥で、春から初夏にかけ夏鳥として渡ってきます。オオルリやカワセミ、キビタキなどとともに出会うと感動すること請け合いの野鳥ですが、豊平公園ではほぼ毎年のように姿を現し、今年の春も現れました。群れることはほとんどなく、個体でいることが普通なので、出会えれば極めてラッキーです。渡りの時期にはほかにも、ルリビタキ、トラツグミなどバードウォッチャーや野鳥写真愛好家に好まれる鳥のほか、ジョウビタキ、イスカなど多くの魅力ある種類を含め100種以上が観察されています。
比較的新しい野鳥観察地として脚光を浴びつつあるのが西区の宮丘公園。札幌環状グリーンベルト構想の一部を成す風致公園に位置づけられた約33haの高台にある森林公園です。
ここには留鳥のカラ類はもちろんのこと、5月、新緑の時期にはキビタキやセンダイムシクイなどの夏鳥が数多く姿を見せます。注目すべきは、マミジロ、ムギマキ、ジョウビタキといった道内では滅多にお目にかからない鳥が時折観察されていることで、コマドリやマミチャジナイに出会うこともあります。また近年、全国的に数を減らしているというヨタカの観察例もあります。
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▲トラツグミ |
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▲イスカ |
12.時に厳しく時に優しい自然の営みを見られる東屯田川遊水池
北区屯田の発寒川と東屯田川が交わる場所に東屯田川遊水池があります。ここはヒドリガモやマガモ、コガモ、ハシビロガモ、カイツブリなどの水鳥が多いバードウォッチングスポットですが、それらの中で野鳥写真愛好家がレンズを向けることの多い水鳥がバンです。
バンは全長37cmほどの鳥で、道内では夏鳥として姿を現しますが、ほぼ毎年、しかも至近距離で見られるという点で東屯田川遊水池は道内屈指の場所として知られています。夏羽は頭から胸にかけて真っ黒。先端のみが黄色の赤いくちばしが印象的でクルルルと大きい声で鳴きます。(左の4写真/ミサゴも現れる東屯田川遊水池)
バードウォッチャーや野鳥写真愛好家の“狙い目”は初夏から夏にかけての時期。バンは1年のうち複数回繁殖しますが、東屯田川遊水池でもほぼ毎年、繁殖しており、この時期にはかわいいヒナが見られます。幼鳥は小さいうちは親に似て黒く、丁度その時期に咲く池のスイレンの上に乗ることもまれにあり、写真愛好家にとっては絶好のシャッターチャンスです。
野鳥写真愛好家にとっての東屯田川遊水池の魅力は、環境省が準絶滅危惧種(希少種)に指定したミサゴが時として現れ、池の大きな魚を急降下しながらハンティングする姿を狙えること。ミサゴは翼を広げると160cmぐらいのタカ科の鳥で、トンビなどに混じって上空を旋回しながら魚に狙いを定め、水に突っ込みます。東屯田川遊水池の隣地には札幌市のパークゴルフ場がありますが、プレー中の人を恐れずハンティングする風景は、札幌の自然の豊かさ、人と野生の生き物の共生を示す姿として、極めて感動的です。
東屯田川遊水池には西遊水池と東遊水池の2つの池がありますが、人気のカワセミも毎年姿を見せます。また隣接する発寒川には、カワアイサ、カイツブリ、ミコアイサなどに混じって少数派の美しいヨシガモも姿を現します。ほかにも池の周囲の木々には、キクイタダキ、アリスイ、ツツドリなどが現れるほか、近くの用水路などでは毎年のようにイソシギが営巣します。
パークゴルフ場横には、バードウォッチャーらも使用できる駐車場などがあり、鳥好きには絶好のスポットかもしれません。
なお東屯田川遊水池は冬期間、凍結してしまいますが、少し離れた創成川は冬も凍らず、オオバンやヨシガモ、ヒドリガモ、カイツブリなどが見られます。
ハシビロガモ |
▲イソシギ(東屯田川遊水池) |
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▲カイツブリ |
▲バンの親子 |
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▲魚を捕らえたミサゴに襲いかかるカモメ(東屯田川遊水池) |
▲カワアイサ |
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▲ミコアイサ |
▲オオバシ |
13.茨戸川緑地、前田森林公園、新川河口……
近年にわかにバードウォッチング・フィールドとして注目を集めるのが北区篠路町拓北と当別町、石狩市にまたがる札幌大橋・茨戸川緑地(右の写真)です。場所は石狩川にかかる札幌大橋と茨戸川にかかる生振(おやふる)大橋の間になり、国道337号から入る地点には札幌市のパークゴルフ場があり、すぐ分かります。
春先から夏にかけては広大な草原にノビタキやコヨシキリ、オオジュリン、ホオアカ
などの鳥がさえずりを響かせるほか、全身が紅色をしたベニマシコや、喉元の赤いエプロンが印象的で本州の野鳥ファンには憧れのノゴマ、そしてウグイスもしばしば姿を見せます。
また三日月湖となっている茨戸川では真っ白で大きいダイサギやアオサギなどのほか、ヒドリガモ、マガモ、カワアイサ、ミコアイツ、キンクロハジロなどの水鳥が羽を休めます。堤防道路と石狩川に囲まれた草原ではトンビが多く、時折空高く“鷹柱”を作ります。さらに夏の入口ごろには繁殖のために渡ってきたショウドウツバメが乱舞することがあります。
札幌大橋・茨戸川緑地のエリアは、憧れの鳥、カワセミにチャンス多く出会える所としても知られています。特に会う機会が多いのは札幌市内唯一と思われる木橋、山口橋のかかる運河で、運が良ければ数メートル先でエサを取るために水中にダイビングする姿も見られます。
手稲区の前田森林公園は駐車場が広大で水洗トイレなども完備したバードウォッチャーや野鳥写真愛好家には至れり尽くせりの場所です。全長600m、公園のシンボルとなっているカナール(運河)の南北には広葉樹や針葉樹の森が広がっており、特に春先から初夏にかけて、さまざまな野鳥に出会えます。人気の青い鳥、オオルリ、黒い体に黄色い縁取りの目をしたクロツグミ、薄青い体にクリクリ目がかわいいルリビタキ、黄色いキビタキ、そしてメジロ、センダイムシクイ、アカハラ、マミチャジナイなど目移りするほどです。園内には小さな水たまりができる場所があり、これらの鳥が水浴びする姿も時折見かけます。
園内には縦横に散策路が巡らされていて、各所にベンチがあり、休み休み楽しめます。
一方、北区の篠路五ノ戸の森緑地はアオサギがコロニー(集団繁殖地)を作っていることで有名です。同緑地は住宅街に残されたわずか200m四方ほどの規模ですが、近年、毎年のようにコロニーが作られています。さらに昨年には札幌では珍鳥に属するゴイサギが観察され、バードウォッチャーや野鳥写真愛好家を喜ばせました。五ノ戸の森緑地の隣接地には篠路団地河畔緑地が広がっており、オオヨシキリ、ノビタキ、エゾセンニュウ、オオジュリンなど草原性の鳥も多いところです。
国道337号と手稲区内を流れる新川が交わった地点を対岸に札幌市の手稲処理場を見ながら堤防道を走ると、車で10分ほどすると日本海の砂浜に出ます。普通、新川河口といわれるこの小樽市銭函の砂浜は、シギやチドリの観察地として大変有名です。
特に出会うことの多い時期は夏から秋にかけて、トウネン、ミユビシギ、キョウジョシギなどはかなりの確率で見られるほか、くちばしがヘラのようになった小さなシギ、ヘラシギやオオソリハシシギ、チュウシャクシギなどの貴重なシギも見られることがあります。またくちばしが赤いミヤコドリなど、“シギチ”ファンにとって垂涎(すいぜん)の鳥の観察例もあります。砂浜の反対側の草地では春から夏にかけ、ノゴマやコヨシキリ、ホオアカなども多く、砂地の崖地でショウドウツバメが営巣することでも知られています。
シギ、チドリが見られる砂浜は地盤が固いため車の乗り入れが可能で、車の中からウォッチングや写真撮影がベスト。ただし念のため四輪駆動車がおすすめで、国道から海岸に至る道路は凹凸道のため走行には注意が必要です。
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▲ヒナのエサをくわえるノビタキのペア |
▲コヨシキリ |
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▲争うダイサギ〈写真拡大〉 |
▲前田森林公園〈写真拡大〉 |
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▲ルリビタキ(百合が原公園) |
▲メジロ |
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▲センダイムシク |
▲オオヨシキリ |
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▲ソリハシシギ(左)とコアオアシシギ |
▲ハマナスとホオアカ |
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