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誇ろう・つなごう・札幌の自然 札幌市政研究所 2012年夏 Booklet No.11
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17.初冬に訪れるシノリガモが必見の石狩湾新港

 
  ▲シノリガモの群れに会える石狩湾新港東埠頭
  雪に覆われる北海道の冬は生き物の気配もめっきり少なくなり寂しげになりますが、こんな季節こそ野鳥に出会える嬉しさは格別です。
 札幌近郊の石狩市で最後に紹介したいのが石狩湾新港東ふ頭、ちょうど石狩湾漁協石狩支所の前の漁港です。春から秋にかけ、近くに魚介類を販売する朝市ができる所なので札幌市民も知っている人が多いはずです。
  実はこの場所、例年12月ごろから翌年3月ごろまで、珍しいカモ類が集まる所として一部のバードウォッチャーらに知られています。何より目につくのは英語名で「ハーレークィーン・ダック」と呼ばれるピエロのような風情のシノリガモ(雄)。年によって飛来数は違いますが、多い時には百羽近くが波間をプカプカと漂い壮観です。また下ぶくれの顔の頬が白いホオジロガモやスズガモ、日本最小のウであるヒメウ、真っ赤な目が印象的なハジロカイツブリ、ウミアイサなども見られます。ほかにもアビやオオハムといった、滅多に見られない鳥に出会えるかもしれません。これらの鳥のほとんどは、時々海に潜って小魚を食べています。

   
 ▲ヒメウ  ▲ハジロカイツブリ
   
 ▲シノリガモの群れ(石狩湾新港)    ▲ホオジロガモ
 ▲ビロードキンクロ(雌)

  シノリガモは道指定の希少種になっているカモで、本来ならそう簡単に見られる鳥ではありません。小樽港などにも冬に訪れますが、わざわざ、そうした遠方に出かけなくても、ちょっと足を伸ばせば見られるのは嬉しい話です。何より、シノリガモを始め多くのカモそしてヒメウ、ハジロカイツブリなどは岸壁近くまで寄ってくることが多く、寒い中でも車の中から間近でバードウォッチングをしたり、写真撮影ができる利点があります。漁港にはトイレもあり安心です。
  石狩湾新港東ふ頭には、この漁協前の港のほか北ガスのLNGタンク群のある方の港にも珍しいカモなどが飛来します。その一つが絶滅が危惧されているカンムリカイツブリ。頭に短い冠羽があるのが特徴の鳥です。ほかにも真っ黒な体と目の下の三日月斑が特徴的なビロードキンクロ(雄)、その名の通り黒くてずんぐりしたクロガモなど水鳥ファンなら憧れの鳥も姿を現すことがあります。
  なお漁協前の港では冬の間も天気の良い日は漁船が出漁し、トラックなどの往来もあります。それらの作業の邪魔にならないように、また岸壁に近づき過ぎて事故を起こさないことが大切です。


18.双眼鏡やカメラがあれば、もっと楽しく思い出に

 
  石狩市生振の防風林や石狩湾新港東ふ頭のように肉眼で、しかも車の中からクマゲラのような貴重な鳥を見られるような場所は、むしろ特殊なケース。やはり人の行き交う公園や広い草原、川筋、山中などできちんと野鳥を見たり、写真撮影をしようとすれば、最低限の道具はあった方がいいに決まっています。
 まずバードウォッチングの場合、倍率7~8倍の双眼鏡を用意。一見、倍率がもっと高いものの方が良いように思いますが、手振れが起こって像が歪んではっきり見えないようになります。大型のものである必要は全くなく、数千円で買えるような小型のもので十分です。ただしピント合わせは中央で左右同時に合わせられるタイプがおすすめです。
  双眼鏡で十分なものの、もっと本格的に大きくアップして見たい人なら望遠鏡という手もあります。その場合は20~30倍の倍率のものがいいですが、必ず用意すべきは三脚です。その三脚も、風が吹いて揺れるのでは使用不可なので、ある程度の重さが必要です。また双眼鏡、望遠鏡のどちらを使うにせよ、鳥類図鑑が一冊あると、鳥のプロフィールを知ることができてバードウォッチングが一層楽しくなります。その場合、写真による図鑑よりも、正確な観察にもとづいて描かれた絵による図鑑の方が情報が多く得られて良いでしょう。
  一方、野鳥の撮影の道具は、まさしく“ピンキリ”です。野鳥のいるフィールドに行くと、レンズだけで100万円以上、ボディ、三脚などを合わせて200万円程度と新車が一台買えるような器材を持った人もいます。確かに遠くにいる小さな鳥を大きく、鮮明に、プロ並みに撮ろうと思えば、レンズの焦点距離が300ミリ以上、できれば500ミリ以上で、なるべく明るいレンズ(その分高価)がほしいもの。また飛んでいる鳥であれば、シャッター速度が早く、秒間6、7コマ以上のものが良いに決まっています。しかし、条件を上げれば上げるほど高価になり、ちょっと野鳥に興味を持った、という程度で買い揃えるのは無謀といえるかもしれません。
 
  少し乱暴を承知でいえば、「ちょっと野鳥に興味を持った」「携帯電話、パソコンの待ち受け画面に使いたい」「デジタルフォトフレームで楽しみたい」「A4判ぐらいの大きさに印刷したい」という程度なら、コンパクトデジタルカメラ(コンデジ)でもチャレンジする価値はあります。最近の“コンデジ”は1万数千円でも手振れ防止機能が付き、光学10倍ズームのものを買うことができます。レンズの焦点距離にもよりますが、ズーム機能を使えば、比較的近くにいる野鳥であれば、車の中からでも撮影が可能です。ただし鳥は、いつまでもその場所に留まっていませんので、シャッターのレスポンスはある程度早いに越したことはありません。シャッターを半押ししてピントを合わせた後、完全にシャッターを押し切るまでに長いタイムラグがあると、鳥が逃げてしまうこともあります。
  最近、テレビや新聞で“写ガール”が一眼レフカメラを手にしている姿を見かけます。その多くの一眼レフカメラは従来の一眼レフカメラと比べ圧倒的に軽いミラーレス一眼です。長時間カメラを手にしていると、カメラの重さは思った以上に体にこたえます。ミラーレス一眼が女性に人気がある理由の一つは軽いことで、またカメラの機構上、高速連写が通常の一眼レフカメラよりアップしているのも魅力です。野鳥のフィールドに行くとこのミラーレス一眼を手にする女性たちも目立つようになりました。ただし、コンパクトデジタルカメラと違って器材にかける投資は大きくなります。
  なお最近は、本格的に野鳥観察や写真撮影をする人の間で、フィールドスコープ(望遠鏡)を使う人が多くなっています。単体の望遠鏡として三脚とセットで用いるのはもちろん、これにコンパクトデジタルカメラを装着して焦点距離1000ミリ以上の超望遠カメラ(デジスコ)として使用することができます。一般的な一眼レフカメラは焦点距離が最も長くても600~800ミリですが、デジスコは遠くの野鳥を大きく写すのに威力を発揮します。撮影のために一式揃えるには“ピンキリ”ながら最低でも10数万円はかかります。
  いずれにせよ、一眼レフカメラ、コンパクトデジタルカメラは今、オートフォーカス(自動焦点)カメラです。このため野鳥を撮る場合、暗い場所や風が強い時などの被写体ブレを除けばピント合わせで失敗することは少なくなりました。従って野鳥を撮る時に失敗する一番の原因は、手振れです。焦点距離300ミリ以上の望遠レンズを使う場合や、コンデジで光学ズームを効かせて撮る場合は特に注意しなければなりません。一般的には1/レンズの焦点距離、つまり300ミリのレンズではシャッタースピードを1/300以上の状態にして撮ることによって手振れを防ぐことが基本です。
  しかし余りにメカにこだわっていては、せっかくの野鳥撮影も楽しくありません。「ちょっとだけ野鳥に興味が」という程度であれば、デジタルカメラの特徴を活かして“数撃ちゃ当たる”式で十分なはず。きっと一枚は思い通りに写っているでしょう。


19.探鳥会に参加して“人と自然との共生”を実感

  当然ながら野鳥は自然の生き物。いくら世に知られた野鳥フィールドといっても必ず毎日会えるというものでもありません。頻繁に出会える年もあれば、驚くほど出会う機会が少ない年もあります。また、いくら探しても目当ての鳥に出会えないこともあれば、思ってもみない珍しい鳥が突然目の前に現れることもあります。今年、バードウォッチャーや野鳥写真愛好家の間で囁かれたのは春先から「鳥が少ないね」でした。例えば昨年春から夏にかけ、キビタキやコサメビタキなど多くの夏鳥が押しかけた前田森林公園は今年、極端にその数が少なく、いつもは撮ることも避けがちな留鳥のカラ類でさえ余り姿を見せませんでした。東屯田川遊水地なども同様です。こうした現象は札幌市内および周辺地域のほとんどで見られました。
 
  しかし野鳥に触れ合い、時に写真に収めるのは楽しいことです。またバンやカワセミ、モズなどのヒナがかえった後の親子の姿、行動に触れると、人間の親子関係にとっても参考になる姿がしばしば見られます。猛きん類が渡りの途中のシギ・チドリ類を補食する姿を見ると、「かわいそう」「残酷」との感情も湧く一方で、自然の厳しさ、食物連鎖の現実を学び取れます。さらに札幌の東屯田川遊水池のように、パークゴルフを楽しむ大勢の人たちの前の池にミサゴが魚を狙って突っ込む姿に出会うと、言葉だけでは分からない、実感としての“人と自然の共生”を膚で感じることができます。
 いろんな楽しみや驚きに触れることができるバードウォッチングと野鳥写真撮影。中でもバードウォッチングは少人数で楽しむのが基本であり、自分で思い思いに出かけるのがベストといわれます。しかし基礎だけは知った上で、探鳥地を多く知りたい、バードウォッチング仲間を増やしたいという人もいるかもしれません。札幌にはそうした人たちの参加を待っている主な野鳥団体が二つあります。
  一つは1977(S52)年に設立された日本野鳥の会札幌支部。全国約90ある支部の一つで、現在の会員数は約700人。西岡公園と円山公園で定例の探鳥会を行うなど毎年約40回の探鳥会を実施しています。会への入会金は年間、一般会員が3000円(1名で登録)、家族会員(本人1名+家族全員登録)が4000円などですが、入会すると支部報「カッコウ」が年11回届き、さまざまな情報を得ることができます。
  日本野鳥の会札幌支部ではホームページを開設しており、探鳥会の日程などを知ることができます。なお探鳥会は事前に参加申し込みの必要がなく、入会を希望すれば直接、探鳥会の集合場所に出掛ければ済みます。入会などについて詳しくは、同支部(☎011-613-7973)へ。
  もう一つの団体は北海道野鳥愛護会です。札幌市内に事務局を置く、1970(S45)年に設立された全道レベルの野鳥団体で、設立には道が深く関わっています。道内各地にある野鳥愛護実践団体などの横の連携を図ることが組織の大きな目的です。
  現在の会員数は約400人。全道組織なだけに札幌以外にも苫小牧や小樽などやや遠出の探鳥会があり、これらを含め年間25回ほどの探鳥会を実施しています。中でも人気なのは、年に1度ほど行う宿泊を伴う探鳥会。今年度は5月、利尻島で行いましたが、「募集をかけるとあっという間に定員が埋まる人気だった」(同会事務局)といいます。
  なお北海道野鳥愛護会では年4回、会報「北海道野鳥だより」を発行していますが、この会報には会員、非会員問わず多くの人が原稿を寄せ、北海道では希少な種の観察報告などが多く掲載されるなど、文献的な価値が高いとの評価を得ています。
 北海道野鳥愛護会への入会を希望する人は、探鳥会当日、集合場所へ。詳しくは同会(☎011-251-5465)にお問い合わせください。


20.野鳥観察を楽しむのに必要な最低限のマナー

  札幌市教育委員会・編のさっぽろ文庫67「野鳥観察」に面白い文章が載っています。それによると札幌市でのバードウォッチングは“官主導”で始まったといいます。
 
  それは1965(S40)年、円山動物園が「探鳥会」と称して実施したものです。しかし当時、探鳥会といっても一般市民には馴染みが薄かったため、飼育係の2人が動物園近くの小・中学校に開催通知を出し、先生にお願いして父母や児童の参加を呼びかけてもらいました。ただそれでも参加者が集まるか心配だったため、「鳥を見てブタ汁を食べよう」と朝食付の探鳥会と宣伝。その結果、予想以上の参加者が集まり、探鳥会は成功したといいます。この方式はその後も毎年続けられましたが、年々参加者が増え、朝食代の負担も大きくなったため、「ブタ汁」は中止に追い込まれました。円山動物園の探鳥会はその後も暫くの間、休みなく続けられましたが、バードウォッチングブームの今から考えると信じられない話です。
  ところでバードウォッチングや野鳥写真撮影には一定のマナーが欠かせません。バードウォッチングの盛んなイギリスには、バードウォッチャーが守るべき事項などを盛った「バードウォッチャー憲章」があるほどですが、それらの内容は札幌のバードウォッチャーも是非守るべきものです。
  例えばバードウォッチングなどをしていて、偶然に野鳥の巣を見つけることがあります。その場合、人が近寄ると親鳥は警戒して、長時間巣に戻らないことがあり、時には巣を放棄することもあります。そうなればヒナの生命にかかわることにもなります。巣を見つけた時にはそっと立ち去り、ウォッチングや撮影を中止することは最低限のマナーです。ちなみに応募形式の野生生物の写真コンテストは多くの場合、作品募集に必ず「営巣中の野鳥の作品は不可」などの注意事項が書かれています。
  野鳥とは直接関係がないにせよ、道を外れてむやみに林や草原の中を歩き回るのも余り誉められたものではありません。林の下草や草原の草は野鳥の巣作りの場所になっていることも少なくありません。そこに生きる小さな虫たちは鳥たちのエサになることもあります。例えばクマゲラは大きな体をしていますがアリも大好物です。人間がこれらの虫たちを踏みつぶせば、鳥たちもいずれエサに困ることもないとは言えません。バードウォッチングも野鳥写真撮影も、人間の側が自然の中に特別にお邪魔しているとの感覚が大切です。
 


 人生いろいろ。見慣れた鳥もいろいろ

  お馴染みの鳥“御三家”といえばスズメ、カラス、ハト。しかしちょっと目を凝らせば、実の所、いつものスズメ、カラス、ハトではない、ということもあります。
 
 ▲ニュウナイスズメ
  まずスズメ。春、満開の桜の蜜を吸うスズメに目を凝らすと、ほっぺたに普通のスズメのトレードマークである黒い模様がない場合があります。さえずりも普通のスズメが“チュ、チュッチュン”であるのに対し、“チーチュリチョチリリ”と頻繁でしかも早口。このスズメはニュウナイスズメといいます。札幌市内でも少し郊外の公園などで見られ、秋には近郊の稲刈り後の田んぼなどで集団で見られます。雄は体が少し赤っぽく綺麗です。
 スズメにはほかにもイエスズメというスズメがいます。普通のスズメより少し大きい鳥ですが迷鳥として見られるだけで、札幌で見るのはかなり厳しいかもしれません。
 カラスにハシブトガラスとハシボソガラスがいること は、少し鳥に興味のある人なら知っているはず。体の大きさはハシブトガラスの方がハシボソガラスより何セ ンチか大きいので分かりやすく、何よりハシブトガラスはくちばしが太く、ハシボソガラスは細いと名前の通りです。
 キジバトのペア→  
  でも札幌で見られる、または見られる可能性のあるのはこれらのカラスだけではありません。事実、昨年から今年にかけての冬、北区篠路の畑で珍しいコクマルガラスが見つかり、バードウォッチャーたちの話題になりました。カラスの中では最小の種で、カラス=黒という常識を覆しお腹が白、ほかの体は青い光のある黒で、カラスらしからぬ表情です。迷鳥または旅鳥として渡ってきます。なおカラスの仲間で尾の長いカササギも札幌近郊で見られます。
 ハトといえば大通公園。このハトはカワラバトが正しく、ドバトとも呼ばれます。本来、レース用などに飼われていたものが野生化したものです。ちょっと郊外に出ると出くわすのがキジバト。派手とはいえないものの、表現するのが難しいほどいろんな色をしています。カワラバトと違って目の縁はオレンジ色。出会えば嬉しいのはアオバト。ほぼ全身が緑色の綺麗なハトです。寿都町や小樽市張碓の海岸に海水を飲みにくるアオバトが有名ですが、札幌でも西岡水源池などで見られます。  


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